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聖マリアンナ医科大学 腎臓・高血圧内科 神奈川県川崎市宮前区

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留学記 abroad-201809

留学記 From Memphis, Tennessee

聖マリアンナ医科大学 腎臓・高血圧内科 谷澤雅彦

 

2018年9月・10月レポート

Memphisの蒸し暑い夏が終わり、短い秋を迎えたと思ったら、急に真冬が到来しました(11月10日記載、最低-3℃)。聞くところによると短い春秋と長い夏が特徴のようです。幸いに緯度が東京とほぼ同じであり、冬は大都市New York、Boston、Chicagoのように大雪になることはなく非常に助かります。ここTennessee州の人口は全米17位、MemphisとNashville(州都)が2大都市で各々65万人程度の人口を有しています。
65万人と言えば千葉県船橋市とほぼ同じくらいでイメージがつきやすいと思います。

 

 


 

 

Memphisと言えば、丁度、日本人2人目のNBAプレイヤーとなった渡邊雄太選手がホットな話題かと思います。
すでに試合は2試合(Memphis Grizzliesのpre-season matchとMemphis Hustlesという下部組織の試合)見に行き、改めて体格と身体能力が必要なバスケットの世界に日本人がいることに、バスケットボールをやっていた身からすると感動を覚えます。しっかりサインは3個ほどもらっています!

 

 

さて、post-doctoral fellowのトレーニングについて報告したいと思います。現在The University of Tennessee Health Science Center(UTHSC), Department of Surgeryの所属で、20か月の予定でトレーニングを行っております。
基礎研究ではなく臨床データを用いた臨床研究のoutcome researchが主体です。
特に腎移植患者(Mentorの関係上肝移植患者の研究も同時並行)の研究であり、臨床データは提携病院であるMethodist University Hospital in Memphisのデータを用います。
ですのでMethodistへはClinical Research Assistantの職位で毎日病院に出入りしています(むしろUTHSCには行っていません)。

 

 


 

 

トレーニングと言っても具体的な教科者やシラバスがあるわけではなく、mentorであるDr. Molnarと一緒にRQ(Research Question)を考え、必要な測定項目(outcome, confounder, mediator, etc)を考え、study proposal(研究計画書)を書いては訂正を繰り替えす毎日です。
最初に腎移植関連のテーマ1個、肝腎同時移植のテーマ1個、肝移植のテーマ1個の計3個を同時並行で開始となりました。まさにon the job trainingを行っています。もちろん英語で会話し、study proposalを記載し、外科医やresearch teamの前でプレゼンテーションを行い、英語力や文化の違いへの崖っぷちの毎日に感覚がマヒしつつも、少しずつでも前に進んでいることを最近やっと実感できるようになりました。
というのもトレーニング当初は、毎日通勤して論文読んで帰宅するだけの生活が続き、達成感や研究が進んでいる感覚がなかったので、気分が落ち込むことも多かったのです。
3か月経過し、最近では次のステップへ進む(データ収集・データクリーニング・解析)段階に来ており正気を取り戻しつつあります。
こちらにきて感じたことは、日本で習った臨床研究の考え方と全く同じことが重要であると再認識できたことです。①研究のデザインが全てで、何度でも何度でも考え、修正し、デザイン(交絡因子、適切なアウトカム、測定可能か、clinical relevantか?、、、等)を揉む事が研究の全てである、②臨床データは①が終わらないと触れない、③研究協力者のcontributionがかなりシビア(統計家、データマネージャー、検査スペシャリスト, etc)、④何がclinical relevantかを常に考える、とmentorに教わりました。実際3か月かけてstudy proposalを6回くらい改定すると、あら不思議、論文の『result』以外はほぼ書けたも同然じゃないですか、、、と気が付きました。

 

お金を払って公衆衛生学や生物統計学の授業に参加しているわけではないので、基礎の基礎を学んではいません。
ですので20か月終わった時に自分ひとりで研究が完結できるとは想像していません。しかし、それでいいと思っています。
『今の自分にとって何が重要か?』を考えたときに、自分は臨床から離れることはないので、深すぎる統計の知識や手法を学ぶ必要はなく、何がclinical relevantで、臨床的に何が重要な交絡因子か?等、研究を計画し、データを集める手段、論文を書く能力を『伸ばす』ことに、この20か月(あと16か月)を使いたいと思います。当面の目標は来年のATC (American Transplant Congress)とASN(American Society of Nephrology)へ演題を提出し、論文を?本書くことです。
正直苦しいこと(英語の壁、文化の壁、経済的な問題, etc)だらけですが、これらは正直渡米する前に何とかすれば解決できたものであり、自分の責任でもあるので、あまり語りません。。帰国するその時に、『留学して本当によかった』と思えるように、日々頑張っております。

 

 

娘の小学校のことを少し。小学校1年生(elementary school 1st grade)で入学して3か月、幸いな事に、一度も欠席もせず、嫌とも言わず、nativeの友達もできて楽しく通っています。
ハロウィンでは、いわゆるtrick or treatでお菓子を山ほどもらったり、娘の誕生日にはお菓子をクラスメートに振る舞うという文化があり、家庭によってはアイスやカップケーキを持ってきて食べれます。
そもそも毎日snack timeがありお菓子持参です(クッキー×、オレオ×、ポテトチップス×、ナッツ類×、ポップコーン〇、グミ〇、フルーツ〇、シリアルバー〇、ルールが日本人には理解不明)。

 

 


 

 

小学校内には自動販売機があり、ほぼ炭酸飲料です。これには意味があるそうで、本来は栄養の観点から望ましくないと、学校や親も理解しています。しかし学校への収益や寄付という観点から(自販機の売り上げの一部が学校へ入る)、自販機の撤去は行えないという、まさに矛盾が多いアメリカの事情があるそうです。
マニキュアok、ネックレスok、ど派手なカチューシャokであり、それにならい、どんどん不良化していくわが娘であります。

 

最後にアメリカに来て4か月間の『自身の心境』は、やっと暗闇から脱した、という心境です。実は日本である程度自分のやる仕事が確立し、(少ないながらも)患者さんから求められ、後輩の方が多くなり指導する立場になり、知らない内に『人から求められているかも』という奢りがあったところから、いきなり『誰からも求められない』環境に来て、言い難い喪失感と虚無感に襲われていたのが事実です。
自分はまだまだなのに、偉そうに『人から求められているかも』と感じてしまうなんて・・・・。恐ろしい。
アメリカに来て喪失感と感じていたものが、実は自惚れであり、それを分かったとたんに、気分が楽になりました。誰からも求められていないので、まぁ楽しくやろう、と。

 

毎日1歩ずつ何かが進歩していれば、残り16か月(480日)のトレーニング期間で大きく成長できると信じて、とりあえず毎日を楽しみます。
次回は初めての家族旅行と車事情+自身の心境(これは毎回)についてレポートする予定です。

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