留学記 From Memphis, Tennessee
聖マリアンナ医科大学 腎臓・高血圧内科 谷澤雅彦
2019年3月・4月レポート
Tennesseeに接している8州完全制覇のためのSt. Louis (Missouri州)旅行から無事に帰り、ほどよい疲労感とほろ酔いの中、家族全員で新元号『令和』の発表をリアルタイムで見ることができました。
同時に30年前の当時の小渕恵三官房長官の『平成』発表のかすかな記憶が蘇り、その当時の自分(8歳の少年)に、『君は次の時代を異国で迎えることが想像できるか?』と聞いてみたい心境になりました。
現在はテレビ電話(しかもInternet回線につなげば無料)があり、メールは1秒足らずで日本まで届き、日本のテレビもリアルタイムで見ることができ(正規のやり方で)、留学経験情報は多数の書籍が販売され、かつ無数にweb上に落ちていて(真意の程は個人の判断)、その恩恵を多分に受けています。
数十年前に留学されていた先人たちの苦労(逆に良い点もあったと思いますが)に思いを馳せて、近代文明の発展の良さ(悪さ)を噛みしめて残りの留学生活を過ごそうと思います。
さて、今回はお酒の話をしたいと思います。
まず原則としてアメリカでは全州法律で21歳以上から飲酒が認められます。
20歳ではないので旅行の際には注意です。
そして最近日本でも定着しましたが、アメリカではどんなに見た目がお爺さんでも、お酒を購入する際にはIDカード(通常免許証)の提示を求められます。
そして以下は州によって異なりますが、お酒自体の販売が禁止されていたり(dry county;注countryではない!)、販売時間が制限されていたり(夕方まで、日曜日は販売禁止等)、外での飲酒が禁止されていたり(お花見ダメ)します。
ここMemphisはアメリカ南部に属しており、キリスト教の普及率が高く、日曜日のお酒の販売が禁止されています。
しかし、スーパーでは普通に陳列しているので、誰でも一度は、日曜日に買おうとしてレジで止められる、という“あるある”経験をします。
“アメリカとお酒”というと、『ひたすら長い国道(Interstate)をハーレーに乗っている巨漢が、ズボンの後ろポケットから取り出したスキットルでウイスキーを飲む』というイメージが(私には)ありますが、少なくともここMemphisではそんな人に出会ったことはありません。
バイクに乗っている人を月に1人くらいしか見ません。
さて、Tennesseeだけにウイスキーの話をしたいと思います。
Tennesseeでウイスキーといえば、そう、『jack Daniel‘s TennesseeWhisky』です。ジャックダニエル。無骨でかっこいいです。
さらにカッコいい表現をすると『It’s not Scotch, It’s not Bourbon, It’s Tennessee』とコマーシャルされています。
細かい話になりますが、スコッチウイスキーの定義はスコットランドで製造され、水と麦芽を材料とし3年以上樽で熟成させるもの、とされています(Scotch Whisky Regulation2009)。
一方バーボンはアメリカで作られるアメリカンウイスキーの一種で、原材料に51%以上のトウモロコシを使用することとされています。
確かにその知識を持って両者を飲んでみると、バーボンにはコーンの甘味が強く広がることがわかると思います。
ではなぜアメリカで作られ、主な原材料はトウモロコシであるjack Daniel’sが『It’s not Bourbon』なのかというと、手間のかかる木炭による2重濾過(Charcoal mellowing)によりまろやかな味に仕上げているところ、禁酒法にも打ち勝ち独自路線で発展してきたところに所以するそうです。
そしてさらに、自らをアメリカンウイスキーでもなく、バーボンでもなく、『Tennessee Whisky』と分類するところ、無骨です。(詳細は書籍やwebで見てください)
この話から、『one of them』ではだめで、『only one』を目指さないと生き残れないのだなと改めて思いました。
ということで、Jack Daniel’sの話をしましたが、今日もビールをおいしく頂きたいと思います。
あと、どうでもいい情報ですが、アメリカのビール瓶のキャプは手でひねると開けられるものが多いです。
続いてアメリカンスポーツについて少し。
アメリカの4大メジャースポーツといえば、野球(MLB)、アメリカンフットボール(NFL)、バスケットボール(NBA)、アイスホッケー(NHL)です。
最近はMLS(Major League Soccer)も人気です。また大学スポーツも非常に人気で、カレッジフットボール、3月から4月に行われる全米体育協会(NCAA)のバスケットボールの決勝トーナメント(March madness)などが有名です。
3月に高速道路の注意掲示板に、『マーチマッドネスは体育館で行います。
道路ではありません』という、掲示があり、アメリカらしいな~と感心しました。
ここMemphisには、NBAのMemphisGrizzlies、その傘下のHustles、野球3AのMemphis Redbirds(St. Louis Cardinals傘下)、サッカーチームのMemphis 901FCのプロチームがあり、大学スポーツでは、University ofMemphisのアメリカンフットボールチームのTigersが強く人気が高いです。
同じTennesseeにはアメリカンフットボール(NFL)のTitansがナッシュビルを本拠地としています。
日本では某チームのシャツや帽子をかぶっていると、少し恥ずかしい気持ちになりますが、アメリカでは日常生活に地域のスポーツチームがよく溶け込んでおり、かなりの確率でチームのロゴのTシャツを着て帽子をかぶっている人に出会います。
これもよく知られていますが、子供達は学年が若いうちには、特定のスポーツだけを行わず、冬はバスケ、アイスホッケー、夏は野球、プール、など様々なスポーツを“楽しみ”ます。
どの子供も試合にでれるように工夫してあり(セレクションによるグループ分け、強制的に出れるようにする等)、勝ち負けはもとより、よい成功体験を積めるようになっている文化があるようです。
なぜスポーツにおいて欧米人が強いかという推察(身体的優位点は置いておいて)に、若いうちに様々なスポーツに触れること、とよく言われていますが、各人の適正選択や様々な動きへの対応力がつくのだと思います。
最後にGrizzliesの渡邊雄太選手が1年間NBAと下部組織で生き残り、来期はGonzaga大学の八村塁がNBA上位でドラフトされ出場すると思うと、田臥雄太と同い年でバスケットボールをやっていた自分にとってワクワクして寝れない今日この頃です。
しかしそれ以上に、彼らが英語が全く喋れない環境で、家族もおらず、一人で成長してきた過程を思うと、現在の彼らの活躍は、ただ凄いと思って見てはダメで、分野は文科系ですが自分を鼓舞してくれる、追いかけていかなければならない存在として応援していきたいと思います。
最後にアメリカに来て10か月間の『自身の心境』は、“スタートラインに立った緊張感とワクワク”、という心境です。
苦労した電子カルテからのデータ収集や大規模データのデータクリーニングが終了し、2月頃から論文を書き始め2つ完成し投稿しました。
ここまでくるのに、様々な浮き沈みがありましたが、どんな職業でも新しい企画を実行する時にはこのような心境になるのではないでしょうか?
そして、苦労がないとこのような心境にはならないと思います。
毎回どのような仕事でも(ケースレポートでも、日本語の論文でも、英語原著論文でも)、投稿する際にはこの気持ちになりますが、この気持ちを一生忘れないように、この気持ちを毎回味わえるように、常に初心の気持ちで、さらに成果を生み出していきたいと思います。
毎日1歩ずつ何かが進歩していれば、残り11か月(330日)のトレーニング期間で大きく成長できると信じて、とりあえず毎日を楽しみます。
次回は日本人にはなじみが薄いアメリカの行事と自身の研究+自身の心境(これは毎回)についてレポートする予定です。