腎生検
腎生検は、蛋白尿や血尿、腎機能障害を認めた際に、腎臓の中で何が起こっているのかを詳しく調べる検査です。
うつ伏せになってもらい、超音波で片方の腎臓(下図)の位置を確認しながら、鉛筆の芯程度の太さの針を使用し、腎臓の細胞を採取します。
但し、以下の場合は腎生検を施行できない、または延期することがあります。
- 腎臓が片方しかない
- 腎臓の形態が通常と異なり、リスクが高い(高度萎縮腎など)
- 腎臓に水泡のような多数の嚢胞がある
- 血液サラサラ系の薬(抗血小板薬や抗凝固薬、血液の循環を良くする薬)を服用中
- 血圧が非常に高い
- 高度肥満
- 妊娠中
腎生検の目的
- 01原因となる腎臓の病気をある程度特定できます。
- 02病気が進行性なのか、治療への反応性が良いかどうかの判断に役立ちます。
- 03治療方針の決定に役立ちます。
腎生検後の注意点
検査後に起こりうる合併症としては出血があります。腎臓は血管がとても豊富であるため、経験値の高い医師でも出血をゼロにすることは不可能です。
このため腎生検は入院して行います。腎臓からの出血で主な症状は、血尿、腰背部の鈍い痛み、吐き気などがあります。
症状が出た場合でも通常は2~3日の安静で軽快しますが、全国平均で1%程度の確率で輸血まで必要になることもあります。
それよりも稀ですが、止血困難例ではカテーテル治療で血管を詰めにいくことがあります。
方法
- 01尿道カテーテルを入れます。(尿に流れ出る出血をすぐに検知すること、検査後安静のためです)
- 02うつぶせ(腹ばい)になり、背中から超音波をあてて、腎臓を見ながら針を刺す部分に麻酔を行い、腎臓を生検します。(息を吸ったり、はいたりして、息止めをしてもらいます)腎臓を生検する回数は2から5回程度です。途中で危険と判断した際は、十分に腎臓の組織がとれていなくても中止します。
- 03腎生検が終わったら、手で圧迫したあと、仰向けになり、そのまま一晩仰向けのままで安静にしてもらいます。
- 04翌日、超音波検査や診察で、歩行してもよいかを判断します。尿道カテーテルを抜きます。腎生検後4-5日後に退院ですが、患者様の状態によって日にちは前後します。腎生検後しばらくは(2-3週間)激しい運動を避けるようにしてもらいます。退院後に血尿が出たり、痛みが出現した場合は受診してもらいます。
血液浄化療法
『腎臓病センター 血液浄化ユニット』は大学病院別館3階に位置し、16床の血液浄化療法専用ベッドと2つの腹膜透析(PD)外来ブースを有し、血液透析(HD)、PDの他に血漿交換療法をはじめとした各種アフェレシス療法を取り扱っています。
当科では、各科とも連携、協力しながら多様な疾患に対する血液浄化療法を実施しております。専任の腎臓内科医、看護師、臨床工学士でチームを構成し、ユニット内で行う血液浄化療法の他に、小児血液浄化療法、集中治療領域での持続的腎代替療法も含め、24時間365日対応可能な体制を整えています。
なお当院は急性期病院という施設の性質上、HDは新規導入含めた入院患者様に限っており、外来通院HDは行っていませんのでご了承ください。
A.血液透析
腎不全が進行すると腎臓の代わりとなる治療(腎代替療法)が必要となります。その中の一つが血液透析です。血液透析は半透膜という膜を介し、腎臓で処理できない尿毒素の除去、余分な水分の移動、不足した物質の補充を行う治療です。
当院では地域の基幹病院として維持血液透析の開始の役割を担っています。
維持血液透析を開始する患者さんは、当院で血液透析開始時の調整を行い、安定した血液透析療法が施行できることを確認後に、継続して通院する外来維持透析施設をご紹介いたします。
また、末期腎不全の症状が出現する前に治療法の選択や準備の手術を前もって行う、「計画導入」を行うことで患者さんの負担軽減と入院基幹の短縮に努めています。
当院では近隣で維持透析を施行されている多くの患者さんの合併症治療も広く行っています。様々な疾患で他科に入院する透析患者さんについても、血液浄化ユニット専任スタッフが各科の担当医と連携を密に取りながら、入院中の透析治療を行っております。
B.アフェレシス
アフェレシスはどの病院でも行える治療ではなく、専門的な環境と知識が必要となります。
当科では高度救命センターを有する病院の血液浄化部門として色々な疾患に対するアフェレシスを提供しております。
アフェレシスとは血液から血漿成分を分離し、その血漿から病気の原因となる病因物質(抗体・サイトカイン・中毒物質) を除去する治療法です。
血漿そのものを交換する血漿交換や、敗血症によるエンドドキシンを吸着するエンドトキシン吸着療法、免疫疾患や神経疾患に対する免疫吸着療法、高コレステロール血漿や閉塞性動脈硬化症に対するLDL吸着療法、炎症性腸疾患や関節リウマチに対する白血球吸着療法など幅広い治療を行っています。
バスキュラーアクセス
血液透析を行う上で、バスキュラーアクセスは必要不可欠なものです。
当科ではバスキュラーアクセスの作成から、その後の管理、インターベンション治療まで、腎臓内科医師が自ら行います。透析のことを熟知した腎臓内科医が行うことでより安全で安定した血液透析を継続することができます。
A.手術
- 01自己血管内シャント
- 02人工血管内シャント
- 03動脈表在化術
- 04カフ型カテーテル(長期留置カテーテル)など
それぞれの患者さんの病状に合わせて適切なものを選択します。
B.バスキュラーアクセスインターベンション治療
長期の透析歴や患者の高齢化に伴ってバスキュラーアクセスの狭窄や閉塞が起こります。
そういったトラブルに対しバスキュラーアクセスインターベンション治療(Vascular Access Interventional Therapy:VAIVT)が行われます。
インターベンション治療とはカテーテルと呼ばれる細い管を血管内に挿入し、狭窄あるいは閉塞部位でバルーンを膨らませることで血流を再開させたり、血栓除去を行ったりするものです。
当院では放射線や造影剤を使用した従来の方法の他に、超音波を用いた被爆やアレルギーの心配のない方法も行っています。
腹膜透析
腹膜透析(Peritoneal Dialysis:PD)は、お腹の中に透析液を入れ、内臓を覆っている腹膜を使って透析を行う方法です。
腹腔に埋め込んだカテーテルを通して、約1.5L〜2Lの透析液を一定時間溜め、排液、注入を繰り返すことで、体に溜まっている老廃物や余分な水分を除去することができます。
- 01生活リズムに合わせた処方が可能です。
ご自身の生活リズムに合わせて、自宅や職場で1日2-4回のバッグ交換を行います。夜間寝ているときに、機械を使って自動的に透析液を交換する方法もあります。 - 02残存機能に合わせて少ないPD処方から始めます。
われわれの施設では、患者さんそれぞれの残存腎機能に合わせたPD処方を行っています。十分な残存腎機能がある場合は短い時間・少ないバッグ交換で行い、残腎機能が低下してくれば徐々に時間や回数を増やしていきます。
- 03血液透析との違い
血圧の変動が少なく、体への負担は少ないです。頻回の通院が不要で、バッグ交換時間以外は自由に生活できます。通院は月に1回程度です。
- 04PDで気をつけること
バッグ交換の際に、手洗い・マスク装着などで清潔を保つことが必要です。また、日々の尿量や取り除かれる余分な水分量をきちんと記録する必要があります。このように、患者さんご自身での管理が重要になります。
その時々の生活状況や残存腎機能などに応じて、共に相談しながらご自身にあった透析方法を見つけていきましょう。
腎移植
腎機能が低下し末期腎不全となった時の腎代替療法の一つとして、腎移植があります。腎移植は患者さんの医学的な利点(生命予後、様々な透析関連の合併症回避)・生活の質の改善効果・医療経済的にも透析療法と比べると良好であるので世界中では盛んに行われています。日本でも近年では2000件/年を超えるようになり、腎代替療法の一つの治療方法として定着してきている医療です。
当院が提供する移植医療の最大の特徴は、腎泌尿器外科と腎臓・高血圧内科が協力して術前から診療を行なっていることです。内科医の観点から細かな全身評価・管理を行うことで、腎移植後の長期的な腎生着率の向上や心血管疾患予防などの生命予後向上に望ましい結果をもたらすと言われているためです。また、当院では平等な血液透析・腹膜透析・腎移植の選択肢を医学的都合ではなく、患者さん・ご家族の希望を第一に提供しております。
腎移植には、ご家族(血族・配偶者・配偶者の姻族)から腎臓を提供していただく生体腎移植と、亡くなった方から腎臓を提供していただく献腎移植の2種類あり、当院ではいずれも行なっております。生体腎移植を希望される方に対しては、腎臓を提供する方(ドナー)と腎臓を受ける方(レシピエント)の術前評価、周術期の全身管理、術後の長期的な慢性腎不全管理を行なっております。献腎移植を希望される方も、当院にて移植施設として登録を行っていただけます。待機期間は平均15年と長期ではありますが、実際に移植が行える時に備えて、年1回の定期的なフォローを行います。
当院のように、内科医が内科医の得意な分野で、責任をもって移植医療に積極的に外科と協力体制をとっている施設はまだ限られており、これが当院が提供する移植医療の強みとなっております。
多発性嚢胞腎
嚢胞とは臓器にできる液体に満たされた袋のようなものです。正常な方でも数個は認められることがあります。しかし、多発性嚢胞腎では腎臓で大量に嚢胞が出現してしまい、腎機能低下を起こす遺伝性疾患です。
近年、各国よりトルバプタン(商品名サムスカ)が多発性嚢胞腎の嚢胞拡大や腎機能低下を抑えると報告され、日本でも保険適応となりました。当外来ではトルバプタンの適応判断や内服方法の相談や指導を行なっております。
また、多発性嚢胞腎は遺伝子の病気の病気であり、遺伝的な悩みを持たれる方も多くいらっしゃいます。皆様のご希望や必要性に応じて、遺伝子検査や遺伝子カウンセリングの外来をご紹介しております。
その他にも、嚢胞腎が大きくなることで起こりうる症状(お腹の張りや腰痛、胸焼け症状など)への対応なども行なっております。お気軽にご相談ください。
尿路結石
尿路結石症は泌尿器科的疾患と捉えられがちで、実際、急性期には泌尿器科的処置が必要です。しかし最近の結石症はメタボリック症候群の一症状であることが多く、実は内科的な予防(再発予防含む)が非常に重要となります。具体的には、食事指導、運動指導、薬物治療等です。
当科では、尿路結石の診断から治療・予防まで内科的な幅広い治療を提供しております。